山崎正和が死んだ。
この件につき、先週若い人と話したら、「だれ?」と言われてしまった。
一応、演劇に関係している者だったので、少々驚いた。
山崎も、劇作家とは見られていないのだ、今の若者には。
彼の思想には、賛同できないが、『世阿弥』はすごいし、面白い劇である。
ただ、やってみると結構難しい劇だと思う。
昔、新国立劇場で、坂東三津五郎主演のを見たが、あまり面白くなかったと記憶している。
彼には、その他に『夏草と野望』、『舟は帆船よ』『実朝出帆』等もあるが、評論の絵解きみたいでかなりばかばかしいものである。
要は、戯曲『世阿弥』に尽きるが、これだけでも日本の戦後演劇史に残る作品だと思う。
意外なことに、これは最初に俳優座で上演されている。今回の訃報には出ていなかったが、それは山崎が若い時に俳優座の演出部にいたことがあると思う。
このときの、演出・主演も、これまた意外にも千田是也と、後の山崎とは反対の立場にいる人だった。
傑作を書いた作家の冥福を祈りたい。