持道具・置道具

昨日、『やし酒飲み』の稽古の講評の中で、舞台監督を急遽お願いすることになった片山さんから、「来週から役者は各自持ち道具を持ち、芝居をするように」とのご注意があった。

「持ち道具」とは懐かしい言葉で、大学で芝居をやっていたとき、私が最初についた裏方は、大道具の助手だったが、チーフとして最初にやらされたのは、道具方の一つ、持ち道具の親戚の置道具だったからだ。

大道具とは、言うまでもなくセットのこと。
持ち道具とは役者が実際手に持ったり、身に着けたりするもので、演技にとって大変重要なものである。
小さな公演の場合は、衣装が担当したり、役者各自がやったりする。本格的な芝居では、必ず担当を付けるが、衣装の助手や演出助手が兼任することもある。
さて、置き道具は、舞台に置いてあるもので、多くは家具類である。

今は、大抵の芝居では借り物で済ませるが、そこは40年前の学生劇団で、予算もないので、「全部自分たちで作るのが当然」だった。
サルトルの戯曲『アルトナの幽閉者』という、ドイツの大富豪の邸宅の家具を作るのだから、今考えれば実に信じがたい。
「天井からシャンデリアを吊るせ」という演出からの指示があり、途中まで作ったが、勿論出来ずにそれはボツ。
全体に素人に到底できることでないが、本当に作ったのだから、知らないということは恐ろしい。

出来は、まったくの「イモ」で、さんざ貶されたが、他にないので本番でしっかり使用され、その後も稽古場のソファーとして長年使われていた。
思い出すと今でも赤面する、とても恥ずかしくなる記憶の一つである。

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