音楽は不況ではない

本日の朝日新聞の「異見意見」に、音楽ジャーナリストの津田大介氏が、「音楽は不況なのか」を書かれている。
その趣旨は、CDの売り上げは落ちているが、着メロ、ネット配信等、他のメディアにおける音楽の需要と使用は確実に増えていて、全体で見れば音楽産業は決して不況ではない、とのことで、全くそのとおりである。

つまり、21世紀になり、従来のレコード、CDを売るという音楽産業のビジネス・モデルが変化してきたのであり、それに十分に対応しないどころか、コピーコントロールCDように、逆行してきたことが音楽ファンの反発を買い、CDの売り上げ減少になって来たのだ。

私も多少関係する出版界でも、「本が売れないのは、図書館や新古書店の性だ」という暴論が、この10年近く蔓延してきた。
ネットの普及という、メディアの大革命の影響も大きいだろう。
だが、バブル時代のように、本や雑誌が飛ぶように売れたこと自体が、日本の歴史始まって以来の椿事だったのである。
それへの反省なしに、「本が売れないのは、図書館だ、ブックオフの性だ」というのは全く根拠がない。

昭和30年代まで、日本の大都市で本や雑誌を買って読むという習慣は、庶民には存在しなかった。
岡本喜八の映画『江分利満氏の優雅な生活』にも、息子が近所の貸本屋で漫画を借りるシーンがある。
また、川島雄三の名作『幕末太陽伝』では、小沢昭一が貸本屋で、本を背中に背負って品川遊郭の女郎たちに貸して歩く姿が出てくる。

現在通用している日本のビジネス・モデルがすべてだ、と思い込むのは大きな間違いなことは、どの業界、業種にもよくあることだが。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする