泉鏡花の名作は、何度か映画化されているが、昭和36年の大映京都作品がいまのところ最後の映画化である。
監督三隅研冶、主演市川雷蔵、万里昌代。
真砂町の先生は、千田是也、千田の娘妙子は三条魔子、万里昌代の姉さん芸者で、実は千田の愛人は、木暮三千代、めの惣は船越英二。
主税を陥れる夫人は、水戸光子、息子は片山明彦など、美男美女ばかり。
昔の映画を見る喜びの一つに美男美女を見ることがあるが、これもそうだろう。
そして、一番面白いのは、千田や船越の江戸っ子弁の啖呵の台詞の面白さと切れの良さである。
こういう日本語は、今のテレビ等からは絶対に聞かれない言語である。
しかし、この先生と主税の関係って、どこかホモセクシュアルめいて見えるのは、私だけだろうか。
この悲劇でも、主人公の美女は結核で死ぬ。
当時、若い男女が死ぬ原因の最大のものは、結核だった。
結核菌は、若い人間の細胞を好むそうで、若い方がよく犠牲になったのだそうだ。