新国立劇場にピランデルロの芝居を見に行った後、バスで渋谷に出て、久しぶりに宮益坂の原田尊志さんのレコード店「エル・スール」に行き、四方山話をする。
世界中が不景気なので、「うちが扱っているような音楽は、新譜がどの国でも出ませんね」とのこと。
作家川口松太郎の息子で、先日なくなられた川口厚氏について話す。
川口厚さんとは原田さんの従妹が結婚し、彼女は、近年は川口松太郎氏の著作権管理もしていたのだそうだ。
彼女とは、このエル・スールで偶然に会い、いろいろと話したことがある。
厚氏は、訃報にもあったが明治座の役員として、病気で倒れる前はプロデューサーをしていたのだそうだ。
だが、脳血管障害で二回倒れられて、最近は闘病で大変だったらしい。
川口松太郎の諸作品は、いまだに利用があり、印税が入って来るのだそうだ。
そして、川口松太郎作品は、意外に西欧的だという話になる。
ポピュラー音楽では、ジャズに見られるように「時代が古い方が実は西欧的で、時代が新しくなるほど、民族的な固有性に回帰する」ものだが、大衆文学でも同様だろうとの話になる。
川口の名作『鶴八鶴次郎』は、アメリカ映画の焼き直しなのだから。
帰り、「何か面白い物はない」と聞くと、「これはどう」とマレーシアのサローマのCDを薦められる。
サローマは、マレーシアの女性歌手で、マレーシアを代表する男性歌手だったラムリーの奥さんだった。
そのCDは、日本の曲を歌ったもので、「テレサ・テンの初期のような感じですよ」と言うので買うことにする。