1962年の『座頭市』シリーズの最初であり、監督は三隅研次である。
1966年に早稲田に入り、映画研究会にも入ったとき、2年上の松本さんや照喜名さんらは、
「座頭市もカラーではなくて、白黒時代が良かったね」と言われていたが、その頃私は、この1作目は見ていなかった。当時、「カツ・ライス」の大映作品は、名画座等で上映されることは少なく、そこでは日活や東映が多く、『座頭市』も1作目はみていなかったのだ。
これを見ると、後の作品で展開される手は、ほとんど出されていることが分かる。
盆の代わりの茶碗で、その外に落ちて出たサイの目に皆が掛けるが、本物の賽子は茶わんの中にある、という手も、冒頭で使用されている。ここでは、卑劣なヤクザの下っ端として出てくる南道郎が非常に良い。
南の妹が万里昌代で、これも最高に良い。
飯岡助五郎が、柳永二郎で、これがまさに卑怯未練な男で、さすがに好演。
最後の飯岡と笹川の出入り、笹川は、町の狭い路地に飯岡勢を追い込んで戦うが、まるで中国での国民党・八路軍のゲリラ戦法のように見える。
最後、笹川を殲滅して祝杯を挙げている飯岡勢は、おごりたかぶる日本軍のようにさえ見える。
監督の三隅さんは、徴兵されて中国に行き、さらにシベリアにも送られたという方で、全編にみなぎるニヒリズムがすごい。