『貴族の階段』


三百人劇場の「吉村公三郎特集」で『貴族の階段』を見た。原作武田泰淳、脚本新藤謙人、音楽黛敏郎、主演森雅之、金田一敦子、叶順子ら。
昔、テレビで見ただけだったので、見に行った。
原作は、武田には珍しい通俗小説で、彼が岩波新書になっている『政治家の文章』を書いたことから出来たものだ。

主人公西の宮(森雅之)は、明らかに近衛文麿を連想される人物で、東条英機らしい陸軍大臣(滝沢修)らとも付きあっているが、その父(志村喬)は英米派の元凶とされている。これは、恐らく西園寺公一だろう。
西の宮は色好みで(近衛の色好みは戦時中から問題だった)、彼の娘・金田一敦子の同級生・節子(叶順子)と出来て、子を孕ませてしまう。金田一や叶が到底高校生には見えないが。
2・26事件の前夜、息子(本郷巧二郎)は反乱軍の仲間から父親が在宅しているか、さぐるために帰宅するが、妹・敦子によって睡眠薬で眠らされ決起に遅れる。
西の宮は、時々呼んでいる、北一輝を思わせる黒目がねの男(佐々木考丸)の情報によって逃げる。
3カ月後、西の宮は総理大臣になる。

政治通俗劇として、なかなか面白かった。なかでも、森の妻の細川千賀子が、新興宗教に凝っていて、森に向かい、「あなたには第一悪魔が取り付いている」というあたりは大爆笑だった。
滝沢や佐々木ら、左翼新劇人が映画では、やくざ、右翼、暴力団、顔役等を演じるのが面白い。
佐々木は、かの労働歌「インターナショナル」の訳詞者なのだ。

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コメント

  1. 「黛敏郎」でブログ検索してみました。

    「 黛敏郎 」の検索結果で、「さすらい日乗 .. 」さんを紹介させていただきました。つながり系サイトです。