『貴族の階段』を見た続きで、『その夜は忘れない』も見た。
監督は吉村公三郎、構成水木洋子、脚本白井更正・若尾徳平。主演田宮二郎、若尾文子、川崎敬三。
東京から週刊誌記者田宮が広島に来る。宿泊は新広島ホテル。あのアラン・レネ監督で何故か大映が作った『24時間の情事』で主人公のフランス人女性が泊まったホテル。
この映画は、明らかに『24時間の情事』を下敷きにしている。
だが、田宮の取材で原爆の痕跡はすでにない。「見ることとは何か」の『24時間の情事』が提起した問題を極めて通俗的な形で再検証する。
ただ一つ掴みかけた「6本指」の胎児の話も、父親に追い払われてしまう。
広島のバーで若尾と知り合い二人は恋に落ちる。
田宮は結婚を申し込むが、若尾は旅館の部屋で裸になり、その胸全体にケロイドがあることを示す。
若尾と音信不通となったなった田宮は、広島に来て若尾を捜す。
彼女は、田宮と結ばれた直後、原爆症が再発し急死したのを知る。
最後、彼女との思いでの太田川に田宮はじゃぶじゃぶと入り、思いでの石を狂気のように探すのだった。
このラストはいかにも大映的で、松竹のスマートな吉村には珍しいシーンだった。
脚本の白井は、大映を後に出てテレビの脚本家になるが、最近見ない。どうしているのだろうか。