先日の『かぶりつき人生』では、同時に神代辰巳監督、三浦友和主演の『遠い明日』も見た。
神代は、萩原健一主演の『青春の蹉跌』のヒットで、東宝で一般映画を作ることになる。
『遠い明日』は、A・J・クローニンの小説の翻案で、殺人者の容疑の父親の嫌疑をはらす息子の話。
その中で、いしだは、萩原を助ける年上の女性、若山は、これまた助ける地元新聞社のオーナーで、この二人は恋仲であり、5年間付き合っているが、セックスしていない。へぇーと思うが、それはそれでよい。
ある夜、いしだが木賃アパートに戻ると、若山がいて、「今日限り別れる、それを言いに来た」と言う。
「なぜ、分からない」と、いしだは叫び、二人の濃厚なやり取りがあり、最後は抱き合う。
「お手軽映画」のこの作品で、唯一の見せ場で、二人は芝居が上手いので見ごたえがある。
また、現実の住宅地で撮影したらしく、遠景の工場の灯り等も本物だろう。
神代は、こうした演出も上手いのだが、そこは松竹出身の監督故である。
いしだあゆみも、この頃が一番きれいだったと思う。