『暁に祈る』

「征戦愛馬譜」と副題された松竹大船映画。
脚本斉藤良輔、監督佐々木康、主演は田中絹代、徳大寺伸、夏川大二郎、坂本武、河村黎一など。
話は、親の反対を押し切って徳大寺と一緒になった田中との夫婦愛、馬への深い愛情、さらにかつては田中に惚れていた夏川と徳大寺との友情を描く。
だが、東宝の戦争映画と異なり、全く意気が上がらない。
なんともしょぼいのである。
田中と徳大寺が育てた馬は、軍馬として徴用され、「お国のために役立つ」
夏川も徳大寺も召集され、共に中国に行く。
愛馬も、そこにやって来る。
最後、徳大寺は、ある市の城壁の攻防戦で壮烈に戦死する。
夏川は、徳大寺の遺骨を首から下げ、愛馬に乗って入城する。
ああ堂々の日本軍だが、それを見る中国人の群れ。

黒澤明の『影武者』『乱』などとは比較にならない騎馬隊の疾駆が見られるが、助監督だった西河克己によれば、習志野にあった騎馬部隊で撮影されたそうだ。
佐々木康監督得意のプレー・バックで伊藤久男の『暁に祈る』等の歌も出る。
笠智衆、三井弘治らも出るが、すべて一般人が召集された兵士で、東宝の軍人役者藤田進のような俳優がいないことが、意気が上がらない理由だろうか。
フィルム・センター 田中絹代特集

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コメント

  1. タカ より:

    私も観ました
    指田さん、こんばんは。いつも楽しくブログを拝見しております。私の昨夜、FCの「暁に祈る」を観ました。平日の夜にも係わらずそこそこお客がいましたね。私の隣りの年輩の方は、伊藤久男の歌が流れるたびに一緒に口ずさんでいました。懐かしの戦時歌謡目当てで来場された方が多かったのかもしれませんね。これからもよろしくお願いいたします。

  2. さすらい日乗 より:

    Unknown
    読んでいただき、ありがとうございます。

    ところで、最後のところでの拍手は、どういう意味だったのでしょうか。
    戦意高揚映画に興奮したに過ぎないのでしょうか。

    私は、中国でニワ鳥を村の農民から徴発したり、城に無神経に堂々入城するなど、当時は当前でも、今日は中国との力関係や差別問題から、到底威張れないと思い、不快なのですが。

  3. タカ より:

    Unknown
    ご返事ありがとうございます。おっしゃる通り当時の戦意高揚映画の内容は、いただけませんね。3人くらい拍手をしている人がいましたが、私も理解できません。
    個人的には、飯田蝶子と坂本武の孫役で出演していた爆弾小僧(清水宏作品によく出ている)にスクリーンで久しぶりに会えたのが、一番の収穫でした。