監督鈴木則文、主演藤純子に鶴田浩二、菅原文太、若山富三郎、山城新吾など。
鈴木らしく、若山、山城、玉川良一らによる笑いもあり、サービスたっぷり。
いかさま博打女が元日活キャバレーのダンサー白木マリ、その夫が水戸黄門西村晃。
明治の中期、上州での郵便事業を手がけている善玉の親分水島道太郎の権利を、生糸工場から事業を拡張させる天津敏が殺して奪おうとする。水島の娘城野ゆきと村井国夫との恋。
藤と白木の女博打打対決、女工哀史の生糸工場。
天津は、強欲な男で、不能者である西村から白木も犯してしまう。
さらに、天津に犯された城野に藤が言う名台詞、
「肌に墨はさせても、心に誰も墨は入れられんとですよ」熊本弁である。
城野ゆきは、岩下志麻に似た美人だったが、余り活躍せずに消えてしまつた。
鶴田が死ぬときに言う台詞
「やくざもんに墓場はない」
一つだけ気になったのが、最初のシーンで藤らが八木節を踊っていること。
八木節は、上州の遊女が作った「新保広大寺」と馬方歌を堀込現太(八木節の本家は代々この堀込源太を名乗っているそうだ)がミックスして明治後期に作ったといわれており、明治中期にはまだ成立していなかったはずなのだ。
少なくとも、後の八木節の編成である、笛、樽の太鼓、大太鼓といった形は当時はまだ出来ていなかったと思われる。どうでもいいことだが、日本芸能史に興味がある者としては、少々気になった。
音楽渡辺岳夫。藤の『緋牡丹しぐれ』もナベタケの作詞・作曲。
ナベタケは、作曲家渡辺浦人の息子で、新国立劇場の初代芸術監督だった演出家・故渡辺浩子の兄である。