新宿でやっている大雷蔵祭、これだけは見ておこうと思っていたのが、1969年の遺作である。
博打打の雷蔵が、北陸の地で活躍するする話だがなんとも暗く、冴えない筋。
脚本は、東映の高田宏次で、近衛十四郎との対決がクライマックスだが、この二人の対決の理由が薄くて、なぜ殺しあうのか全く理解できない。
雷蔵の弟分は、金内吉男で、新劇なので演技が理屈で、ヤクザ映画の様式性には合っていない。
監督は、戦前からのベテラン安田公義だが、この人は稲垣浩の弟子で、テンポと画面で作る人なので、ヤクザ映画の「しがらみ劇」には向いていない。
東映と大映は似ているようで、微妙に違い、大映は根本のことろ陽性であり、ヤクザ映画の暗さと屈折は、東映京都のものである。
近衛十四郎と市川雷蔵の決闘が最大の見せ場のはずだが、映画はその後も続く。
なんとも変なシナリオだった。
その後、数ヶ月後に死んでしまう雷蔵は、やはり痩せていた。
新宿シネマート