つか こうへいが死去した。
62歳、肺ガンだそうだ。
1973年暮れ、岸田戯曲賞を取った彼の『熱海殺人事件』を読んだときの衝撃は今でもよく憶えている。
それは、村上春樹の『風の歌を聴け』を読んだときのそれと似ている。
どちらも、「日本の同時代に、こういう発想をする人間がいるのか」というものだ。
どこか日本人的でない。
後に、つかが在日であると聞き、「ああ、そうか」と納得した。
『熱海殺人事件』でも、反体制と権力が対立しているが、結局は日本人同士で仲良くしているだけではないか、と外から冷笑している。
これは、普通の日本人には、なかなか得られない立場である。
村上春樹の場合は、アメリカ文学への信じられないほどの教養によるものである。
つかの作品が1980年代、若者に熱狂的に支持されたのは、当然だと思うが、その後はやや停滞していたと思う。
それは、彼の持っていたクールな冷笑的批評と言う立場が、言わば時代の主流になってしまったという皮肉な結果のためである。
ともかく団塊の世代の一人の大きな才能の死を悼みたい。
やはり、タバコは諸悪の根源である。