公開時に見て、よく理解できなかったが、今回見てもよく分からない。
話は、1930年代にフランスで起きたスタビスキー事件を基にしているが、このスタビスキー事件自体を我々はよく知らないので、スタビスキーを主人公にする意味が理解できないのである。
映画は、ロシア革命の指導者で、権力者スターリンに追われたトロツキーが、フランス海岸に亡命してくるところから始まる。
スタビスキーも、元はロシア系のユダヤ人であり、彼が所有する劇場では、役者のオーディションが行われていた。
そこには亡命してきたドイツ系ユダヤ人の女優が、アヌイの『間奏曲』の一節を演じる。
まさに、今日から回想すれば、1930年代は、二つの世界戦争の「間奏曲」のような時代だったことになる。
スタビスキー役は、ジャン・ポール・ベルモンドで、監督は「難解ホークス」の監督アラン・レネである。
彼の作品では、何と言っても『去年マリエンバードで』が「最高」で、私は3回見たが、筋をまったく理解できなかった。
それに比べれば、まことに分かりやすく、前半はスタビスキー夫妻の豪華な生活を描く。
政財界との交流もすごく、スペイン戦争のフランコ派への武器売却をめぐって大もうけをしようとするなど国際的でスケールが大きい。
だが、最後は勿論、詐欺がばれて、破産、捜索、そして自殺になる。
この辺は、アラン・レネらしく時制を交錯させ、国会の調査委員会証言、葬式、逃亡劇等が入り混じり、「あれっ」と思わせる。
スタビスキーの自殺シーンも実に淡々としていて、日本の映画ならベルモンドは大芝居をするところだが、実にあっさりとしたもの。
映画としてみれば、中途半端だと言うことになる。
ドラマチックでもなく、ドキュメンタリー的でもなく、「結局それで何を言いたいの」ということになる。
イーストマンカラー・パナビジョンの画面、珍しやミュージカル作曲家スティーブン・ソンドハイムの音楽はひどく美しい。
NHKBS