コンゴ民主共和国(旧ザイール)のバンド、ベンダ・ビリリの記録映画を黄金町のシネマ・ベティで見る。
音楽的には、西アフリカで最もポピュラーなリンガラ・ミュージックで特にどうという事もないが、彼らがユニークなのは、メンバーのほとんどが路上生活の障害者であることにある。いかにもアフリカ的イメージに依拠した感もあるが、そうした暗さは全くない。
身体障害は、ポリオによる小児麻痺であるらしい。
ポリオは、下水の土中にいるポリオ・ウイルスによって感染するもので、日本でも1950年代まで、幼児は必ず罹り、多くは発熱等で免疫が出来て終わった。
だが、数パーセントは小児麻痺になった。ポリオ・ウイルスは、小児の足等の筋肉を好んで食べ、その発達を阻害してしまうからである。
ところが、1950年代以降、日本では下水道の整備が進み、幼児の自然感染がなくなった。皮肉なことにそこで起きたのが、爆発的な集団感染だった。下水等の土に触れなくなったからである。
そこで、ソ連から生ワクチンを緊急輸入した。このときに活躍したのが、当時NHKの記者だった上田哲である。何度も社会党代表選挙に出た上田である。
このときのことをヒントに作られたのが、映画『われ一粒の麦なれど』である。
さて、アフリカと日本では、ポリオによる小児麻痺は多少違うようだ。ここでは、腰から下が立たず、ほとんど這いずるようにして歩く人もいる。アフリカの方が症状が強いのだろうか。
さて、彼らは様々な困難を克服してCDを出し、欧州に行き、各地のフェスティバルに出る。
先月には、日本にも来て、日比谷野音でもコンサートがあったようだが、都合が悪くて私は行けなかった。
映画館は、若い男女で意外なほど一杯だった。
ひさしぶりにリンガラ音楽を聴いたので、家に戻って聞くことにした。