『アンストッパブル』

古い日本映画だけではなく、面白いものならアメリカ映画でも見る。列車が暴走して停まらないものだと聞き、面白そうだと見に行く。
話は、人為的なミスで暴走する機関車をどうやって停まらせるか、と言うもの。すぐに、黒澤明が製作を企画したが出来ず、後にコンチャロフスキーによって愚作として作られた『暴走機関車』を思い出すに違いない。監督佐藤純也の唯一の傑作『新幹線大爆破』も同じで、これはハリウッドで『スピード』に作り変えられている。
今回の作品がユニークなのは、暴走機関車を停めるのに、後ろから別の機関車を走らせて追いつかせ、運転手を乗り込ませて停まらせようとすること。1台ではなく、2台の機関車が疾走するのだから、その映像は爽快である。
映画は、動くことが本質であり、サイレントでも『大列車強盗』の名作もある。

追いかける機関車の二人の運転手は、クビを告げられているベテラン運転手のデイゼル・ワシントンと新米クリス・パイン。
二人は、当初立場の違いに衝突していたが、暴走機関車を停める作業の中で、次第に打ち解けて行き、双方の家庭の事情も明かされていく。
この辺は、現在のアメリカの現実をよく反映している。
勿論、最後は無事停まり、関係者は英雄的に扱われる。

黒澤明の『暴走機関車』との大きな違いは、黒澤のシナリオでは事件の関係者だけのこととされ、運転手が家に帰った時、妻には何も言わず、「いつものとおり」と言って終わる。
だが、ここでは事件は始りからすべてテレビで中継され、時々刻々の関係者の動きも報道され、家族も一喜一憂する。アメリカは、日本以上にテレビ社会だと言うことだろう。

場所は、南ペンシルバニア州と設定されているが、理由はスタントン市に大きなカーブがあり、そこは低速でないと曲がれないという関門を設けているからだろう。
こういう単純明快さがアメリカ映画の強みである。
上大岡東宝シネマズ

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コメント

  1. トニー・スコット監督 「アンストッパブル」

    今年最初のCinemaレビューになりますが…
    劇場で観た映画は実はこれが今年2本目
    1本目は昨年暮に観た「相棒‐劇場版2‐」の再鑑賞
    だって今年最初の公休日(6日)に、私が観たいと思える作品がまだ上映されてなかったし…
    なにげに「相棒‐劇場版2‐」メチ…