以前から見たいと思っていたのが、野村芳太郎監督の『震える舌』である。
なにしろ、松竹映画史上、最低の興行成績しか上げられなかった作品なのである。
三木卓原作、井手雅人脚本の話は、極めて単純である。
渡瀬恒彦、十朱幸代夫妻の5歳くらいの娘が、ある日突然強い引き付けを起こす。
大学病院で検査の結果、破傷風であることが分かり、そこから血清を注射し、引付には胃への導菅による食物の摂取、さらに音、光等を徹底的に遮断して治療する。
だが、娘は何度も深刻な引付を起こし、しまいには夫婦も感染したかのような妄想にまで取り付かれる。
一体、どうやって死の場面を盛り上げるのか、と見ているとなんと奇跡的に回復し、助かってしまうのだ。
これには、なんともはぐらかされた気がした。
ここまで不幸をあおっていて、助かるはないでしょう。
なんとも気の抜けたような作品だが、十朱幸代と主治医中野良子の対決映画でもあり、これは見応えがある。
だが、十朱幸代の判定勝ちで、きちんと演技している十朱に対して、中野は、どんなシーンでもどうしたら自分がきれいに見えるか、と言う観点でしか演技していない。
それが見えるので、私には中野良子の演技は、どの映画を見てもいつも満足できないのだ。
衛星劇場