フィルムセンターの山田洋次特集で『喜劇・一発大必勝』を見るが、ハナ肇主演の『いいかげん馬鹿』の「馬鹿シリーズ」のような面白さはない。
ハナ肇の役者としての限界を感じたのだろうか、この半年後、山田は渥美清主演の『男はつらいよ』を始めるのである。
感情を爆発させることが演技の中心であるハナに比べて、渥美清は、言うまでもなく演技の幅が非常に広く、様々な表現ができるからである。
この1969年秋、世の中は騒然としていて、1969年11月某日、佐藤栄作首相訪米阻止を掲げた過激派は小雨の中、蒲田駅周辺で暴れた。
翌日、蓮沼の映画館ヒカリ座に、『男はつらいよ』を見に行くと、徹夜で地元を守った「蒲田自警団」の若者がこの映画を見ながら寝ていたのを思いだす。