『夜の豹』

1958年、フランク・シナトラ主演のコロンビア映画、共演はキム・ノバックとリタ・ヘイワース。
サンフランシスコにやってきた若い芸人のシナトラは、昔の知り合いがいたクラブに強引に司会と歌の仕事にあり付く。
それはほとんど詐欺のような言説によるもので、その調子の良さにはあきれる。
ダンサーに美人のキム・ノバックがいて、誰でも自分に惚れると思い込んでいるシナトラは、キムも誘うが、まるで相手にされない。
彼女は歌も上手く、スタイルが抜群。

ある日、丘の上の豪邸のパーティーの仕事が入り、皆で行くと、その女主人は、かつてはストリッパーで、シナトラとも深い関係のあったリタ・ヘイワースだった。
そこで、シナトラは彼女のダンスをオークションに掛けて、寄付に多大な貢献をする。
そして、マネージャーと彼女が今週中に店に来るか否かの賭けをすると、土曜日に彼女は来る。
リタとよりを戻したシナトラは、豪華なクラブ設立への投資を彼女にさせ、それはシナトラの夢の実現となる。
だが、キム・ノバックが歌手としてクラブで歌うことをリタは絶対に認めない。
それではと、シナトラはすべてを捨てて、キム・ノバックとサンフランシスコを後にする。

元はミュージカル『パル・ジョーイ』なので、きわめてご都合主義な筋だが、よくできている。
また、下品で女たらしだが、シナトラの演技は大変可愛くて、愛嬌がある。

ここで描かれていることは、二つある。
一つは、何でも頑張ればできると言うアメリカン・ドリームである。
もう一つは、金や地位などよりも好きな恋人と一緒になるのが一番幸福だという思想である。
どちらも、戦後最もアメリカが幸福で良かった時代の、アメリカそのものイデオロギーである。
この後、1960年代になると、黒人の公民権運動の高まりとベトナム戦争によってアメリカは、大きく傷ついていく。
そうした傷が全くない時代のアメリカである。
衛星劇場 いつか見た映画

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