昨日、フィルム・センターで今井正の『純愛物語』を見たら、新劇人総出演の中で、蜷川幸雄が非行少年の更正工場の工員として、またラスト・シーンで主人公・江原真二郎に渋谷駅前でぶつかる通行人として、地獄大使・潮健児が出ていた。
この映画は言うまでもなく、今井正監督、水木洋子脚本で江原と中原・バンビ・ひとみが「純愛コンビ」として売り出された話題作だったが、長いせいか(2時間10分)名画座でもあまり上映されず、見逃していたが、今回初めて見た。よく出来ている映画である。
第一にすごいのは、役者が良いことで、東野・水戸黄門・英治郎などが、たったワン・シーンだけ出てくる。企画が後に芝居の企画集団の五月舎を作る本田延三郎さんなので、新劇人が大挙出演している。岡田英次が観察官、木村功は中原を診る医者。そこの看護婦がワン・シーンだけで荒木道子。チンピラに田中邦衛、井川比佐志。中原の唯一の味方となる少女の更正施設の職員が楠田薫。
やはり、いかに今井正が役者に信頼されていたか、を物語るエピソードだろう。
今井正は、総体としてもっと評価されて良い監督だと思う。
さらに神田隆や清村耕治など、枚挙に暇がない。
蜷川は最後、江原が働いているビスケット工場の工員の同僚として出てくる。
今井の中でも名作だと思うが、観客はやっと半分くらいだった。
名画も人気、不人気の差がはなはだしい。