『丸秘・色情メス市場』

なんともすごい題名だが、大傑作である。
丸秘を入れると編集画面では、丸の中に秘と出るのだが、投稿するとなぜか無意味な数字と記号になってしまうので、漢字二字で表記する。
ただし、主人公芹明香の弟・夢村四郎を精神薄弱者にしているのは、私には愉快ではないが。

日活には、1954年の製作再開から、大阪もの、下層階級もの、売春婦もの、の伝統がある。
それは今村昌平の『人類学入門・実録エロ事師たち』、神代辰巳の『かぶりつき人生』が最高だと思って来たが、これもそれと同列に並ぶ作品である。

大阪の南、釜が崎で売春をやっている芹明香は、母親の花柳幻舟もいい年をして売春で生きていて、お互いに客を取り合ったりする仲というすごさ。
意外にもいろんな役者が出ていて、高橋明、庄司三郎、榎木兵衛ら日活の生え抜きの脇役たちは勿論、『土佐源氏』で有名な坂本長利、以前は寺山修司のところにいた萩原朔美、ピンクからの宮下順子、絵澤萌子など。
釜が崎をオールロケした安藤正平の撮影がすごいが、このシャープさは日活リアリズムの伝統である。
周囲を走っている路面電車・阪堺電車のチープさが素晴らしい。

宮下順子を高橋明に取られた萩原朔美が、焼跡のような場所の煙突の中に連れ込み、そこで3人が爆死してしまうショック。
母親の花柳が流産する三角形の連れ込み宿の、「本当にこんな不思議な建物があったのか」と思う意外さ。

この作品を作るために監督の田中登は、西成に通ったそうで、本当に足で歩いて作った映画という気がする。
こういう作り方が、本来の映画の本道で、それがロマンポルノという極限的な状況で生まれたのは実に皮肉なことだった。
音楽も樋口康雄と随分と洒落た音楽家だったとは驚く。

田中登は、大変優秀な監督だったと思う。
大島渚が驚嘆したという『実録・阿部定』は確かに傑作だったが、個人的には、室田日出男が主演した『人妻集団暴行致死事件』が一番好きである。

黄金町 シネマジャック

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コメント

  1. ss より:

    Unknown
    「マル秘」と表記するもんじゃないですかね?

    「女子学生マル秘レポート」なんて人気ポルノシリーズもありましたがw

  2. 岡田茂だそうです
    この○の中に秘と書くのは、『大奥マル秘物語』のとき、岡田茂が考案したそうですが、本当でしょうか。元は、軍隊の「極秘報告書」等からきていると思いますが。