1958年、有楽町の外堀が埋め立てられ、フードセンターと高速道路が出来た時、ここでは宮城区と中心区とされているが、それを千代田、中央のどちらの区に編入するかを題材とした作品。
ほとんど笑えない喜劇だが、二つの注目されることがある。
一つは、監督が『涙』『伊豆の踊り子』等の真面目な作品の多い川津義郎であること。さらに、脚本と共に、詩人役として、後に『砂の女』などの作品を監督する勅使河原宏が出て、下手だが、それなりの芝居をしていることだった。
勅使河原が、役者として映画に出ているとは知らなかった。
筋は、フードセンターのお菓子屋のレジ打ちをしている美女の起こす物語だが、これが瞳麗子なので、美人と言われても申し訳ないが、そうかあ、と言うしかない。
彼女は、勅使河原を初め誰にでも好かれるので、フード・センター地下にクラブを開いた藤間紫の店にスカウトされる。
当初は閑古鳥が泣いていた店が、急に繁盛し、彼女は三国一郎が司会するテレビ番組にまで引っ張り出される。
そこではテレビ局の内部がいい加減なことが描かれるが、この辺はテレビへの映画人の蔑視がある。
この年は、11億人と日本映画の観客数が史上最高で、テレビなど問題にしていなかったのだから。
最後、区域編入がどうなったかはよく分からないが、実際は中央区に入れられたようだ。
この外堀の埋め立ては、当時話題だったもので、日活では今村昌平監督で『西銀座駅前』を作っている。
かなりとぼけた喜劇で、この方がはるかに面白かった記憶がある。
その他、瞳麗子を誘惑しようとする財界人が千田是也で、料亭に連れ込むが、そこに闖入して目茶苦茶にする売春反対のおばさんが、岸輝子というお笑い。当時、二人は正真正銘の夫婦だったのだから。
衛星劇場
これに勅使河原が出た経緯が分った。この役は、本当は南原宏二だったが、小林正樹の『人間の条件』の撮影が延びて、出られなくなった。そこで、小林も知っていた勅使河原宏が出たと言うのだ。
コメント
何年前のある映画際で
瞳麗子が路線バスの車掌役で出演した
「朝を呼ぶ口笛」という映画を観ました。
汚れた奥戸川に沿った京成バスの営業所がかなりの荒れた建物で
まだ戦後 12年くらいの時代が背景だったのですね。
瞳麗子の地味な制服、前に提げたカバン、貧弱なバス。
当時の路線バスは中卒を多く採用していたそうで
15 、16歳から働いていた方達の厳しさを感じました。
新聞配達所のおかみさんの沢村貞子が
キャラクターにぴったりに感じました。
それに新聞配達少年を励ます配達先の美少女が
なんと、吉永小百合でかなりのインパクトでした。