『わが恋は燃えぬ』

1949年、松竹京都で作られた溝口健二監督作品。新藤兼人の本を読むと、彼が脚本を書いて松竹に出したものを溝口が「横取りして」監督したものだそうだ。

企画は当時松竹にいた絲屋寿夫氏で、彼は歴史家でもあり、後に新藤兼人、吉村公三郎らと近代映画協会を作り、初代社長になったのだ。

話は、日本の女性解放運動の一人である福田英子(田中絹代)、彼女と結婚していたこともある自由民権運動の大井憲太郎(菅井一郎)のことである。

岡山で、女子教育の私塾をやっていた田中は、上京して民権運動の世界に入る。

そこは、彼女の幼馴染で運動を裏切り、警察のスパイだとされる小沢栄太郎もいるが、同じ意思を持つ同志として田中は菅井と結婚し、大井憲太郎は最初の国会議員選挙で当選する。

だが、もともとは田中の家の女中で、娼婦に売られたのを救い出してきて自分の家に女中として置いていた女に水戸光子がいる。

そして、彼女と菅井はできてしまう。

それを田中が知って怒ったとき、菅井は言う。

「あれはただの妾だ、こんなことで怒ったら君の沽券にかかわるぞ!」

明治時代の女性への見方はそんなものだったのだと改めて感じた。

新藤の本によれば完全な失敗作とのことだが、田中絹代がインテリ女性を演じるのには違和感があるが、新藤が言うほどはひどくはないと思う。

長瀬記念ホール OZU

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする