昔、大学に入学したとき、驚いたものの一つが「カツカレー」というものの存在だった。
いくら美味しいからと言って、そこまでやることはないだろうと思った。
身も蓋もない気がした。
BSで井上梅次監督の『銀座っ子物語』を見て、「井上梅次はカツカレーのようなものだ」と思った。
いくら面白くなるからと言って、ここまでやることはないだろうという感じなのだ。
話は、銀座の呉服屋中村鴈治郎の三人の息子、川崎敬三、川口浩、本郷功次郎が、それぞれレスリング、アメリカン・フット・ボール、ボクシングの選手でスポーツマン。
だが、鴈治郎は関西の出で、銀座に来て一代で呉服屋を作ったと言うことなので、それを銀座っ子と言って良いのだろうかという疑問はあるが。
その3人が、ホテルの社長の娘で秘書の若尾文子に惚れてしまう。
だが、最後は川崎敬三は若尾文子と、川口浩は野添ひとみと、そして本郷功次郎は江波杏子と結ばれることになり、東洋紡に勤めている川口浩が家の呉服屋を継ぐことになる。
なんとも予定調和的な世界である。
何か見ていて、結局馬鹿にされたような気分になる。
井上梅次の映画は、上手く出来ているが、いつもこちらが馬鹿にされているような気分になる。
なにも、そこまでやらなくてもと思うのである。
井上梅次の映画は、面白いけれど、それ以上の評価できないという感じなのである。
「この程度でお前たちは満足だろう」と言われている気がしてくる。
この作品は、川崎敬三が体育協会職員で、若尾がホテルの女性でと、共に東京オリンピックの対策で奮闘することがテーマとなっている。
大映の社長の永田雅一が、親友でオリンピック担当大臣だった河野一郎に頼まれて、東京オリンピックの広報宣伝の一環として作ったものだと思う。
いずれにしても適当な作品だと言うしかない。
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