『女弥次喜多・タッチ旅行』

東京の石油会社のBGたち(この頃はビジネス・ガールと言っていたが、現在のOLのこと)が、社内の封建的な社風に反発し、「お茶くみ」を拒否し、組合婦人部として闘争に入る。
3人の若手、牧紀子、弘田三枝子、岩本多代は、「せっかくならこの際、会社を休んで」と、東北に貧乏旅行に出る。
勿論、金がないので、ヒッチ・ハイクを次々にバトン・タッチさせる「タッチ旅行」

盛んに「なんでも見てやろうよ!」との台詞が出てくるが、言うまでもなく小田実のベストセラー『何でも見てやろう』のことで、私も中学校の図書室から借りて読んだおぼえがある。

宮城、青森、秋田の観光地を廻る喜劇であり、千葉信夫、由利徹、八波むとし、大泉洸、若水ヤエ子、そして渥美清らの喜劇人も出る。
恐山が出てくるのも、時代的には早い。

実は、この映画は、なぜか東京都学生映画研究会連盟が推薦し、その宣伝キャンペーンに、当時同連盟の幹部だった早稲田の梶間俊一氏(後に東映の監督となり、『かまきり夫人』等の作品を撮った)らが、松竹本社前でタスキを掛けて立っている写真を見たことがある。
なぜ、そのようなことになったのかは不明だが、なんとも呑気な平和な時代のエピソードである。

話は、吉田輝男による「渡り鳥シリーズ」をはじめ、りんご園での大群衆の女性でのりんごの収穫の『草を刈る娘』などのパロディもあるが、それほど上手く行っていない。松竹で、この種のパロディーをやるのは本来無理なのである。

監督は、大島渚らの近くにいた上村力で、このパロディーに見られるように比較的冷静で批評的であり、この作品の他『愛する』を監督したのみで、企画室のプロデューサーになるが、その選択は正しかったようだ。
そこで大ヒットさせたのが、『男はつらいよ』なのだから。

ここで渥美清が、戦中派で全国を虚無僧姿で放浪している中年男を演じているのが、大変興味深い。
それは、『男はつらいよ』の寅次郎の原型にも思えるからである。
そして、最後は「額に汗して働くことが正しい」と言う、松竹の城戸四郎も、日共民青も賛成のイデオロギーになってしまうのは、残念だが。
チャンネルNECO

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