1971年に日活が、ポルノに転向した後、藤田敏八が梶芽衣子を主演にして作った、まさに劇画ムービー。
まさに劇画チックに筋が展開し、血が流され、斬られた片腕が飛ぶ。
昔見ていると思っていたら、これではなく二作目の『修羅雪姫 恨み怨歌』だった。
話は、不幸な生まれの女の梶芽衣子が、母親(これが当時、藤田と一緒だった赤座美代子で笑える)や村人の復讐に、犯人たちを次々と殺すもの。
最後は、鹿鳴館の舞踏会で、岡田英治を、実は彼の息子の、黒岩涙香を思わせる反体制的ジャーナリスト黒沢年男と共同して殺す。
すると、岡田の娘の中田喜子に梶は刺されて、雪の中に倒れる。
そして、微笑んで終わり。
藤田作品としては、大したものではない。
映画『八月の濡れた砂』のように、白けてクールな抒情性がその本質で、怨念とか恨みとかいったものに一番遠いのが藤田敏八なのだから。
梶芽衣子は、もともとは吉永小百合似でデビューしたように大変な美人である。
だが、今ひとつ作品に恵まれていないと思う。
この『修羅雪姫』や『さそり』は、本当に彼女にふさわしい役なのかと思う。
私が見た範囲では、『野良猫ロック』は別として、深作欣次の『仁義なき戦い 広島死闘篇』の不幸な女は、良かった。
原節子が、『めし』などの成瀬巳喜男作品で普通の女性を演じてよかったように、普通の主婦を演じればよかったのではないかと私は思うが。
それに近いのは、増村保造の原田美枝子主演の映画『大地の子守唄』での、原田を助ける田舎の女の役だったと思う。
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