山本富士子主演、森雅之共演の浅草を舞台とした映画。
川端康成が原作らしいが、脚本が成沢昌茂、監督は島耕二で、どことなく永井荷風の原作を清水宏が監督した『踊子』や、成沢が永井荷風の原作を基に脚本・監督した『裸体』等に似ている。
昭和21年、山本富士子は、霧立のぼると木村三津子に挟まれた、三姉妹の次女。
浅草の焼け跡のビルに住んでいて、霧立のぼるは、バーに務めて家族を養っている。
霧立の恋人が森雅之で、戦前は仲見世で金物屋をやっていたが、復員すると店は焼け、妻は別の男と一緒になっている具合で、ニヒルな生活を送っている。
ある夜、霧立は森から、闇の砂糖の横流しを手伝わされ、大金を手にし、森と結ばれるが、森はすぐに姿を消してしまう。
すると、砂糖は森のものではなく、食糧公団のもので、買った菓子屋から「詐欺だ!」と言われ、霧立は、それを気にして自殺してしまう。
7年後の、丁度映画が作られた昭和28年、山本富士子は、浅草の不良少女グループのリーダーになっていて、ポン引きやカツアゲで生きている。
妹の木村三津子は、レビュー小屋の歌手になっていて、片山明彦と恋仲である。
そこに森雅之が、7年ぶりに九州から浅草に戻ってきて、山本に会う。
山本はすぐに森を分かるが、森は霧立の妹の山本を知らない。
最後、山本は夜の船に森を誘い込み、キッスさせて、毒薬を森に口移しで飲み込ませて殺す。
すごい殺人方法だが、そんなことできるのだろうか。
そして、過去をバラし、「お前を殺すためにずっと浅草で待っていたのだ」と言うが、「好きよ」と言いつつ自分も毒を呷って死ぬ。
かなりおかしな話である。
最後の、死につつ、山本が「あんたが初めて好きになった人よ」と森の体に重なりながら言うのには、思わず笑ってしまった。
単純にサスペンス劇すれば良いものを、木村三津子の片山明彦との恋愛沙汰や山本との三角関係などの寄り道が多く、筋がすっきりしていないのである。
森雅之の色男ぶり、山本富士子の美女ぶりを堪能すれば良いだけの映画かもしれないが。
浅草やレビュー小屋をめぐる風俗的な描写はなかなか面白いが。
冒頭の歌のシーンで「浅草はジャズの町」と歌われるのには、少々違和感があるが、当時はポピュラー音楽全般、ジャズは勿論、タンゴ、シャンソン、ハワイアン等もジャズと言ったので、まあそれでも良いが。
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