『愛妻物語』

言うまでもなく、新藤兼人の初監督作品で、スクリプターで妻だった慈子さんのことを描いた作品。
昔、テレビで見たことがあるが、今回見直して結構良いではないかと思った。
理由は、実話であり、自分の妻を主人公にするという「おのろけ話」なので、新藤が監督をした際の問題点である押し付けがましさが抑えられていることだろう。
さらに、大映京都作品なので、大映のスタッフの力によって新藤のワガママも抑制されていると思う。

戦争に入る昭和17年、新興キネマ脚本部にいた新藤の宇野重吉は、映画会社の統合で余剰人員となり、知人の清水将雄を頼り京都に行く。
乙羽信子の父香川良介は、ヤクザな職業である映画界の男との結婚を許さないが、乙羽は宇野を追って家出し京都に行く。

溝口健二を思わせる滝沢修の大監督から、宇野はシナリオ執筆を依頼される。
だが、書き上げると、「これは筋書きです! シナリオになっていない、ドラマがどこにもない」と酷評される。
悲観した新藤を励まし、1年間の勉強へとかき立てるのは、妻の乙羽信子だった。
世界戯曲全集を読み、脚本を勉強した宇野は、今度は滝沢からも評価されるシナリオを書くことができる。
だが、そのとき乙羽信子は、結核で死ぬ。
当時は、良い薬もなく、健康保険もなかったので、結核になると即死だった。
衛星劇場

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