『新・兵隊やくざ火線』

勝新太郎と田村高広のコンビの『兵隊やくざ』シリーズの最終作で、大映ではなく、勝プロ・東宝配給作品の性か、なかなか上映されず、ビデオにもなっていない珍しい作品。
脚本・監督が、第1作目も作った増村保造なので、期待して見たが、あまり面白くない。
勝新と田村高広が、理不尽な軍隊で縦横無尽に暴れる様が、それほど爽快ではないからである。

昭和19年、戦争末期の中国で、例によって二人は前線の部隊に入らされる。
そこでは暴力的な軍曹の宍戸錠がえばっていて、すぐに勝新太郎との喧嘩になる。
この二人のアクション・シーンは流石だが、宍戸のは日本、アジア的ではなく、アメリカ人がボクシングをしているように見える。
このへんは、日活と大映の風土の差である。

小隊長が大瀬康一で、人情味ある男だが、宍戸は鬼軍曹で、大滝秀治の市長などの中国人に対しても残虐の限りを尽くす。
中国人女性が安田道代で、勝とは立場を越えて恋仲になり、勝は自分の「宝物」として安田道代の身を守る。
勿論、最後は勝が宍戸に勝ち、安田は八路軍に戻る。

勝は言う。
「戦争なんて大嫌いだ!」

と田村高広と二人は、軍服を脱ぎ捨てて、中国人服を着て大陸でどこまでも生き抜いて行くことを誓う。
この二人が示す中国人と中国へのシンパシーは、公開当時1972年の日中友好関係の田中角栄による進展と無関係ではないはずだ。
日本映画専門チャンネル

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