『犯罪者は誰だ』

敗戦直後の1945年12月に公開された大映作品、阪東妻三郎が自由主義的代議士を演じる珍作。
結論的に言えば、さすがの田中重雄も描きようがなかったのだろう、やたらに人物が歩いているシーンが続出する。

昭和16年、東條内閣ができ、その議会で阪妻は議決に疑問を呈し、その後も自由主義的立場を変えない。
その結果、最後は憲兵隊に拘引され、投獄されてしまい、娘は婚約を破棄され、妻も死んでしまう。
だが、1945年8月15日、日本はアメリカに敗北し、阪妻は牢獄から解放される。
こんな作品をなぜ作ったのか不思議で、脚本は村上元三なので変だと思って資料を調べると、岡本潤の名も連名になっていた。
岡本は、戦前から京都の共産党員で、日活のストライキのときに活躍した人である。
推測するに、岡本が基本的な筋を書き、それを村上がシナリオに仕上げたのだと思う。
ともかく、阪妻が、あの調子で軍国主義と軍閥を批難し、民主主義をうたいあげるのだから、実におかしい。
だが、自由主義者で、その言論のみで投獄された議員っていただろうか、私は寡聞にして知らないが。
フィルムセンター

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