『劍聖・暁の三十六番斬り』

またしても荒木又右衛門、昭和33年の新東宝映画で、又右衛門は嵐寛寿郎、河合又五郎は丹波哲郎、渡辺数馬は和田孝、河合甚三郎は竜崎一郎という地味な配役、監督は時代劇が多い山田達雄。
かなり史実と違うところも多いが、結構面白い。
本来、嵐寛寿郎は、荒木又右衛門ではないと思うが、さすがに上手く演じている。
ただ、思い入れが多いのは困るが、それが昔の芝居である。

ここでも筋の中心は、河合を守る旗本と池田家の対立であり、次第に仇討ちはどうでもよくなる。
丹波哲郎の又五郎を守る旗本連中が、36人もいて、その道中はまるで大名行列である。
最後、伊賀の鍵屋の辻で、待ち伏せての決闘になる。
アラカン以下、和田孝、天知茂ら4人は、丹波哲郎をはじめ旗本連中に勝ってしまう。

途中、アラカンは二刀流まで使い、講談のようにたった4人で36人を斬ってしまう。
アラカンは、言うまでもなく歌舞伎の女形出身だが、殺陣は上手い。
そこは、同じ女形出で、殺陣が下手だった市川雷蔵や大川橋蔵らと大変違うところで、サイレント時代から新東宝まで、この人が長く主役として活躍できた理由の一つだろう。

音楽が、大島渚作品で有名な真鍋理一郎で、この人はかなりの皮肉屋だったので、ラストのチャンバラ・シーンになると、音楽が急にサイレント時代のような、三味線を中心とした和洋合奏になってしまう。
これは、「今時なんという映画だ」という真鍋の批評であると思う。

渡辺数馬の和田孝は、弱々しい二枚目で適役だが、すぐにテレビに移行して『若い季節』などで人気になった。
だが、それもやめて横浜で人形作家になり、山下町に横浜人形の家を作るとき、産業貿易センターでよく見かけた。
温厚なやさしい人柄にみえたが、その後はどうしたのだろうか。
チャンネルNECO

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