自治体がなぜ電力会社の大株主なのか

先週、電力会社の株主総会で、東京の猪瀬副知事や大阪の橋下市長らが、筆頭株主として発言したことが報じられた。
なぜ、東京や大阪などの自治体が電力会社の大株主なのだろうか。
自治体はお金持ちなので、かつての財テク時代に株を取得したと考える方もいるかも知れない。
だが、これはそうではなく、昭和初期にこれらの都市には電気局があり、それを戦時中の電力統合で電力会社に現物出資の形で委譲し、その代わりに株を受け取ったからである。
電気局と言うのは、電力事業も行っていたが、その主要な事業は路面電車の運行だった。
当時、電気の大口利用者は、電車事業だったのだ。

横浜の例で言えば、この市電の運営は、今と異なり大変儲かる事業で、1950年代までは、交通局の職員の給与水準も一般職員よりも高く、自社ビルを保有し、さらに毎年の黒字分を一般会計に納入していたほどである。
現在では、毎年約100億円の補助金を一般会計からもらっているのとは隔世の感がある。
勿論、この補助金は、高齢者や障害者等への優待パス交付の補てん分の補助金であり、別に不当なものではないが。

一般的に、都市の人口が、50万から100万人の規模であると、路面電車事業が成立するとされている。
要は、都市部に大多数の住民が住み、都市の中で移動することで、経済活動が成立しているので、路面電車事業が成立する。
しかし、それ以上人口が多くなると、市民は郊外に住み、長距離を電車で通勤して事業所に通うことになるので、都市内部を動く路面電車は成立しなくなる。
そこでは、自動車利用が、都市内部の主要な交通手段になり、必然的に渋滞も起き、路面電車事業は成立しなくなるのだ。
今でも、鹿児島、金沢、豊橋等に路面電車が残っているのは、このような事情によるものだそうである。

因みに、横浜市はかつて市瓦斯局も持っていて都市ガス事業をやっていた。これは明治時代に高島嘉衛門らが始めた事業を受け継いだものだった。
これをやはり戦時中に東京ガスに委譲したので、横浜市は東京ガスの筆頭株主になっており、今でも市役所OBから監査役を出している。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする