『あにいもうと』

1976年秋、ホラー映画『妖婆』とほぼ同時期に東宝で公開された今井正監督作品。
当時も高く評価されたが、今見ても大変見事な作品である。

ラスト近く、もんの秋吉久美子と伊之の草刈正雄が家の中で喧嘩するシーンはすごい。
日本映画の歴史に残る名場面だと思う。

多分、今井正は役者に「本気でやれ!」と言ったはずで、本当に本気でやっているように見える。
今井は、映画『夜の鼓』で、夫の三国連太郎が、不義を働いた妻の有馬稲子を殴る場面で、「本当に殴れ」と三国に言い。
三國は、本気で有馬を殴った。そのため、有馬の頬がはれて、その日は撮影ができなくなったことは有名だろう。

また、配役も秋吉、草刈の他、父親の大滝秀治、母親の賀原夏子、秋吉の妹の池上季実子、さらに下條アトム、蟹江敬三、伊佐山ひろ子、なべ・おさみ、会沢萌子と多彩な役者が出ている。
中では、賀原夏子の最高の間の台詞が笑いをとる。

昭和初期のPCLの木村荘十二監督の映画、戦後の大映での成瀬巳喜男作品も秀作だが、これも大変素晴らし出来である。
渋谷毅の抒情的な音楽も良い。
フィルム・センター

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