『ピンクレディーの活動大写真』

日本の芸能史で、ピンクレディーほど人気の上下が激しかった者はないだろう。
それは、あのマンガチック路線が爆発的に受けたからで、それは作詞の阿久悠の計算どおりだった。
最初のシングル盤の時、レコード会社の幹部は「あのパカパカダンスはなんだ」と言ったらしいが、それが小学生等に受けたのだ。
だが、もともとこの二人は、フォークソング的な曲を目指していたようで、グループ解散後、それを出すが受けなくなる。
自分が目指すものと表現するものは違うことの典型の一つだろう。

さて、この映画は、1978年の人気絶頂期に作られたもので、撮影期間はどの程度あったのだろうか。
二人の映画を作るために、プロデューサー・石立鉄男、監督・田中邦衛、脚本家・秋野大作が考えて映像化される。
まずは、秋野の庶民映画、看護婦のケイが働いている下町の病院が津村病院というのが笑える。
筋は、ケイとミーが、同じ男の田中健を好きになるという話で、実につまらない。
次は、石立で、SFだとして、変な怪獣が出てきて、それを人寄せにするサーカス団の少女が二人で、メグレサーカスは、キグレサーカスのことだろうが、これも不発。
最後は、田中監督案で、西部劇、岡本富士太が恋人で、彼をめぐる西部劇になっていて、悪役は「丸大ハム」の田中浩。
特に知恵があるわけではないが、これが一番二人に合っている。
それは、現代の日本人の生活様式、表現等が完全に西欧化していることを表していると思う。
もし、時代劇をしたとすれば、まったく不自然になったと思うからだ。

全体としてみれば、彼女たちのステージの映像の間に劇が挿入されるもので、ライブの姿が一番輝いているのは仕方のないところだろう。
だが、このライブがモノラル録音なのはひどいと思う。
監督は小谷承靖で、彼はアクションからSFまでなんでも撮る人だが、本質は抒情的な作風で、仁科明子主演の映画『初恋』がベストだったと思うが。

衛星劇場

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