『夜の肌 赤坂の姉妹から』

1960年の川島雄三監督の東京映画作品、赤坂でバーをやっている淡島千景と妹の新珠三千代、さらに田舎から上京してくる末娘川口知子の三姉妹の話。
川島作品なので、こった画面構成や意表をつく展開があるが、要は三姉妹がそれぞれの生きかたをしていくというもので、言うまでもなくチェーホフの『三人姉妹』を下敷きにしていて、それを実際の上演でばらしている。
多分都市センターホールらしい会場で、劇団のかもめ座で、三姉妹を演じるのは久慈あさみ、高山真樹、それに石原慎太郎の愛人で死んだ劇団四季の女優だった中町由子である。
だが、この三人姉妹を、ここでは「さんにんきょうだい」と言っている。
兄弟姉妹をいちいち「きようだい」と「しまい」ではなく、すべて兄弟と言ってしまうことが、この当時までの普通の言い方だった。
溝口健二の名作『祇園の姉妹』も、「ぎおんのきょうだい」である。
兄弟と姉妹をきちんと区別するようになったのは、やはり女性の地位の向上によるものであることは言うまでもない。

淡島も実は元は劇団の女優だったのだが、生活苦からバーの女給になり、新橋から赤坂へとバーを出してきたのである。
元日本テレビ社長の氏家氏の奥さんは、大島渚の『青春残酷物語』や『日本の夜と霧』にも出た青年座の女優の氏家鎮子さんだが、彼女は青年座の女優だったが、アルバイトで銀座のバーに勤めていて、そこで当時読売新聞の記者だった氏家氏と知り合い結婚したそうである。

新珠は、姉の店を手伝ってきたが、本当はなにをしているのかよくわからない何でも屋のフランキー堺と付き合い、最後はブラジルに行く。
川口知子は、上京してきて大学に転入し、左翼学生の露口茂、蜷川幸雄らと付き合い、教授の三橋達也の元で社会学を勉強する。
実は、三橋達也は、若い頃は劇団にも関係していて、元は淡島と恋人だった。

最後、淡島は、先輩女将の山岡久乃の料亭を受け継ぎ、赤坂の出世者になり、開店日に政治家伊藤雄之助の斡旋で総理大臣が来るところでエンドマーク。

三人姉妹の末娘の川口知子は、ボーイッシュで可愛い女優で、文学座にいたと思うが、若くして亡くなった。
実は、川口は、私の遠い親戚で、私も中学生の頃、正月に親戚の家で一度だけ見たことがあるが、きれいだった。
日本映画専門チャンネル

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