『にっぽん零年』

1969年に、大塚和プロデューサーが、日活の藤田敏八、河辺和夫、浦山桐郎、斎藤光正の4人でつくりはじめた作品だが、途中で浦山と斎藤は下りて、藤田と河辺の二人で作ったもの。
大塚和の目論見としては、ソ連のタシケント映画祭に出す予定だったが間にあわず、そのために日活最後のお蔵入り作品になったという。

日本の若者を描くもので、学生運動の東大3年で、反帝学評、社青同解放派の池ヶ谷峰明、新宿のフーテン女で、カメラマン志望の佐野京子、さらに特定の個人は出てこないが、自衛隊を対象にしている。
池ヶ谷の恋人は、新劇研究生とのことだが劇団は不明、1969年夏から秋、そして翌年1月の東大闘争までが描かれる。
中で面白いのは、二人が8月の広島の原水爆禁止世界大会に行くところで、被爆者の男女と会い、二人は現実と想像の落差に打たれる。
ここは、撮影を担当した大津幸四郎も衝撃を受けたとのこと。
フーテン女の佐野の部分は特に面白いところはなく、当時テレビで見たような映像のみ。
さて、最後の自衛隊だが、一体誰が撮ったのだろうか。
作風から考えれば、浦山で、入口の自衛隊全般を撮影したところで放棄されたのだろうと思う。
因みに、学生運動の部分は藤田で、フーテン女は河辺の担当だったとのことである。
いずれにしても、作品としては大したものではないが、当時の学生運動が過激で、高揚していたことがわかる映像であることは間違いない。
川崎市民ミュージアム

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