オリンピックは面白いのだが、日本選手がメダルを取るたびに流される、家族愛、夫婦愛、苦労話等の安手なお涙頂戴ビデオにはうんざりして、本当のアクション・ドラマを見たくなった。
『ワイルド・バンチ』は、何度も見ている。当時は、ビデオやDVD,CS等の便利なものはなかったので、『ぴあ』で調べて東京中の映画館に行ったのである。
大塚にあった大塚名画座でも見た。
ここでは、同じくロバート・ライアンが主演した『狼は天使の匂い』も見た。
さて、サム・ペキンパー監督の『ワイルド・バンチ』だが、アクション映画だが、その抒情性、回想で挿入される、ある種悔恨にも似た感情のある暗さを持った、ロバート・ライアンの主人公ソーントンとウィアム・ホールデンのパイクの友情、さらに最後まで生き残るサイクスじいさんなど、男たちの関係も素晴らしい。
ロバート・ライアンが良いのは言うまでもないが、ギャング一味の首領のウィアム・ホールデンも実に良い。
体で演技をするというのは、こういうことである。
鉄道から軍隊の武器を強奪するシーンのテンポ、これはまさしくジャズの国の映画であって、役者の動きは、音楽映画のようにリズミカルな動きで展開されていく。
もしかしたら、プレ・スコ撮影のように、現場で何か音楽を流しながら撮影したのではないかと思うほどにリズミカルである。
そして、最後のウィアム・ホールデンらの男たちが、メキシコの将軍マパッチの砦に殴り込んで行く時の姿は、完全に東映のヤクザ映画のラストシーンのようである。
この砦での惨劇は、言うまでもなく当時アメリカが直面していた、ベトナムでの戦争のことであり、サイクスじいさんが先住民と共に現れ、そこにロバート・ライアンも参加することになるのは、彼らのベトナム戦争への考え方を表現しているはずだ。
日々見せられるつまらないお涙頂戴劇を離れて、本当のドラマを堪能した。