見始めて、「なんだこれは、なんとも愚かしいな」としか思えなくなって来る。
木下恵介の遺作なのと思うと少々唖然とする。
主人公は、板東英二の鹿児島生まれの父親で、息子の野々村真が語ることで進行する。
坂東は、建築屋をやっていたらしいが、県会議員選挙に出て落選するところから始まる。
その後、熊本に行き、女子プロレス興行をするがうまくいかず、妻の大地喜和子は、大阪に行きクラブのママになる。
坂東は、いつも「でっかいことをやる」と言っているが、言うだけでいつも成功しない。
そこから坂東も東京に行き、さらにブラジルに行き、ブラジルから変な黒人青年を連れてきていて、彼を世界的大歌手にすると意気込んでいる。
勿論、これも成功せず、東京でスペインレストランの雇われマダムで成功した大地とは、離婚する。
最後、母親が鹿児島に持っている土地に大地喜和子が店を出し、鹿児島の大学に入学した野々村が、屋台のおでん屋になった坂東と別れて抱擁するところで終わり。
一体、これってなんなの。
だが、よく見てみると、この呆れたバカ親父と離婚する大地も、結局最後まで坂東と心情的にはつながっているようにみえる。
これは、父親と息子の愛情を描いた作品ではなく、様々な問題が起きても、そう簡単には別れない夫婦というものの不思議さをテーマにしているようにも思える。
自らは、ほんの短期間しか結婚しなかった木下恵介の、普通の夫婦関係の不可思議さから来ているのではないだろうか。
そう考えると、この題名は『父』ではなく、『夫婦』とすれば正しかったように思えた。
調べると、この映画は、全国から父母について作文を募集し、それを基に木下恵介が『父』を、松山善三が『母』を監督したとのこと。
どうにもつまらない話だったのは、そういう理由だったのかと分かった。
いずれ、映画『母』も見てみるが、多分面白くないものに違いない。
衛星劇場