1960年代末に、連続射殺魔として恐れられた殺人犯永山則夫をモデルとした、ほぼ事実どおりの映画。
脚本・監督は新藤兼人で、主演は、昨年参議院議員になりそこねた原田大二郎、母親は勿論、乙羽信子、博打好きでいい加減な父親が草野大吾。草野は、いい役者だったが、早くなくなった。彼が、映画『天平の甍』で、中国に行ったときの『同志、俺にビールをくれ!』は、とても良い本だったが。
その他、渡辺文雄、佐藤慶、小松方正、殿山泰治、太地喜和子、浜田虎彦、河原崎長一郎、鳥居恵子、清水紘治、広瀬昌介、田島和子、神保共子、村野武徳、果ては高杉早苗、平井岐代子、戸田春子まで出ている。
この1970年頃は、新劇の他、アングラ劇団も出てきて、さらに映画会社も俳優の専属契約をやめたので、いくらでも俳優が調達できたのだろう。
新藤兼人は、言うまでもなく日本映画史に残る大脚本家、独立プロダクションの名経営者だが、私は、監督としては、あまり良いと思ったことがない。
いつも異常に真面目と言うか、暗くて、息苦しく、どぎつく、遊びが全くないので、見ていてつらいのである。
それは、新藤の資質なのか、日本映画界のタコ部屋と言われる、合宿方式の制作方法に性なのかは、知らない。
だが、この作品が、近代映画協会製作で東宝配給、つまり東宝の金で比較的余裕のある予算で作った故の、余裕なのではないか、と思うとき、新藤監督作品のギスギス性は、普段の製作の低予算にあるのではないかと思った。
いつもの新藤映画の異常さがなく、比較的淡々としていて、見やすい。
青森の極貧家庭から集団就職で上京し、渋谷の某フルーツ・パーラーに就職した山田道夫は、転職、離職を繰り返し、次第に下層社会に落ちてつつ、日本中をさまよう。
新宿のジャズ喫茶では、フーテン娘がラリっていて、外の街頭では全共闘が機動隊と衝突している。
そして、偶然米軍基地のハウスで盗んだ拳銃で、ガードマン、タクシー運転手等4人を殺害する。
だが、諸悪の根源は、日本の社会でも、貧困でもなく、何が起きても従順に夫に、周囲に、子供について行くしかない母親乙羽信子の愚かさだ、と、新藤監督は言っているように見える。
日本の女性、特に母親の愚かさと優しさを田中絹代はずっと演じたが、ここでの乙羽信子は、愚かさのみを代表しているように思える。
いつもながら、林光の音楽が良い。
山田道夫が卒業する細柳中学の校歌を歌うのは、林隆三。
衛星劇場
コメント
映画同好会(名前検討中
今 動画で 田中絹代さんを 観ていました
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重犯罪が なくなる世の中になりますように