1954年に大映が、松竹からわざわざ鶴田浩二を借りてきて、京マチ子との共演で作った作品。
『愛染かつら』は、戦前の松竹版の他、戦後直ぐに水戸光子と竜崎一郎共演で大映が、さらに1960年代に松竹が岡田茉莉子と吉田輝男で作っている。
映画の本質である美男・美女のメロドラマとしては、良く出来ている話だからだろう。
この木村恵吾監督作品は、時代設定がよく分からないが、戦前のことのようだ。
津村病院の看護婦高石かつ枝と病院長(青山杉作)の長男鶴田浩二の恋愛話。
戦前の松竹の総集編と比較して見ると、戦後なので、京マチ子の女性としての役割が大きくなっている。
かつ枝の姉の三宅邦子は言う。
「母も女ですものね」
この映画は、京マチ子の「女としてと母親として」の役割の葛藤がテーマになっている。
戦前の田中絹代・上原謙、戦後の岡田茉莉子・吉田輝男版では気づかなかったが、この高石かつ枝と津村浩三とのセックスである。
どうやら、この鶴田・京マチ子版では、青山外苑での二人の最初にデートの後、どこかでセックスしたように思えた。
この作品のもうひとつの見所は、京都に行った鶴田の後を京マチ子が追いかけていく。
京都の下宿で、意味不明なやり取りで、船越英二から追い返された京マチ子が、京都の町を彷徨うシーンがあったことである。
これは、戦前の田中絹代版では、有名なシーンだった。
だが、現在の松竹の総集編では不要なシーンとしてカットされていて見られないのである。
そこを再現されているのは大変面白かった。
最後は、もちろん音楽祭で京マチ子が歌うシーンで終わり。
看護婦長は、ここでも岡村文子、その他同僚看護婦の町田博子が大活躍する。
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