『不良少年』

『不良少年』と言えば、岩波映画で羽仁進が監督した1960年の作品が有名だが、これは1956年に東宝で谷口千吉が監督したもの。

主人公の少年施設の指導員は、菅原謙二を大映からよんで演じさせている。

菅原は、柔道有段者で少々硬いが、生真面目な二枚目で、確かに都会的でスマートな俳優ばかりの東宝にはないタイプの役者である。

彼は、大映の崩壊後は、劇団新派で脇役をやっていたが、だいぶ前に亡くなっている。

不良少年たちは、久保明、佐藤允、江原達怡、今は毒蝮三太夫の石井伊吉など。

卒園生にはキャバレーのウェイター太刀川洋一、工員の藤木悠の他、女性では、ダンサーの中田康子やパンパン・ガールの青山京子など。

原作は、本人も孤児から施設指導員の経験もある西村滋で、彼の原作は、日活で石原裕次郎主演,松尾昭典監督の映画『やくざ先生』にもなっている。

菅原は、まさに熱血先生だが、いつも空回りして少年たちとは上手くいかない。

そして、生徒指導に失敗し落胆した夜、新橋の青山京子の下宿に行き、

「前から先生が好きだった」という青山の言葉に負けてできてしまう。

翌日、そこに警察が踏み込んで来て、二人は売春容疑で挙げられてしまう。

タバコ屋の本間文子の下宿で売春をやっているのは、千葉泰樹の名作、三船敏郎と山田五十鈴の『下町』にもあり、当時はよくあったものなのだろうか。

絶棒した菅原は、辞表を出すが、その帰り道に、久保明らが脱走しているのを目撃し、川辺で彼らとの格闘になる。

ここは、菅原の柔道が見られる。

久保や佐藤らは、菅原を倒して逃げるが、その途中で菅原のことが気になり戻る。

最後、施設の創立者笠智衆が死んだ家で、菅原も、少年も、笠が丹精して育てていた柿の木の下に集まり、笠の1周忌を祝うのだった。

どこまで原作に忠実なのかは不明だが、事実と東宝的きれいごとの間で、あまり上手くできなかった作品だと思う。

半ばストリッパー姿の中田康子がキャバレーで踊るが、さすがに上手い。彼女はNDTのダンサーだったのだ。

青山京子を見ていると、太った高峰秀子のように思えてきたが、東宝の女優の典型はやはり高峰秀子だったのだろう。

阿佐ヶ谷ラピュタ

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