赤い貴族ルキノ・ビスコンティ監督の作品、1948年制作だが、日本で公開されたのは、1990年、私も随分前に録画しておいたが、やっと見る。
世に名作と言われる作品は多く見るとがっかりと言うものは少なくないが、これは本当に名作である。
すべてがシシリー島の住民による演技だが、その群集シーンは本当に素晴らしい。
これに匹敵するのは、溝口健二の『新平家物語』の祇園祭りや、マイケル・チミノの『天国の門』くらいではないだろうか。
話は、シシリー島の漁民の戦いとその敗北である。漁民は常に仲買業者に魚を買い叩かれており、軍隊に行き、他の世界を見たトニーは、この不公平性に怒り、銀行から融資を受けて船を買い、自分で漁が出来るようになる。彼らの船は、船主のもので、多分借りて操業しているので、船主からも収奪を受けているのであろう。
当初、漁は成功で、イワシの大群に会い、取れすぎたものを皆で塩漬けにする。
だが、ある嵐の前兆の日にトニーは漁に出る。
彼も船主になった以上、雇用している漁師を養うためには、操業しなくてはならないからだ。
嵐で、トニーの船は行方不明になる。
やっと嵐が収まり、救助船に曳航されて戻ってきた船は、帆も網も失い、残ったのは借金だけだった。
村八分にされた一家に、さらに銀行の意を受けた裁判所の取り付けが来て、一家は家を後にする。
最後、トニーは、船主のところに行き、一漁師として船に乗り込むことになる。
冒頭にビスコンティが述べているように、これはシシリーだけの問題ではなく、すべての収奪のある場所のことである。
全体にメルヘン的であり、神話的とも言える。
BS2