1959年、それまで文芸映画で真面目な若者を演じていた小林旭が、その後の渡り鳥シリーズなどの荒唐無稽な役柄に転じる契機になった作品。
監督は舛田利雄で、彼のアイディアを山崎巌と江崎実生で脚本化したそうだ。
ジャズ・ドラマーの旭は、元ボクサーで、年上で銀座のクラブの女の南田洋子と同棲している、つまり彼女に養われている若きツバメである。
彼はその腕を、土建屋の安部徹やヤクザの金子信雄らに買われて身内になることを誘われていれうが、いつも断ってきた。
ある時、母高野由美と二人暮らしの没落した良家の女子大生の浅丘ルリ子と知り合う。
女子大は、かの東京女子大であり、この付近が再三出てくる。
安部徹は、浅丘の家を乗っ取ろうとしており、彼女たちが全財産を掛けて立てているアパート工事を請負、口実を付けて金を巻き上げようとしている。
それに気づいた旭が、ルリ子を助けて安部との対決に行き、痛めつけられる。
窮地に陥った旭を金子信雄が救ってくれる。
だが、その代わりに金子が出した取引は、旭を東南アジアの諜報機関の人間として外国に行くことだった。
最後、丸の内の電話ボックスから小林旭は、完成したアパートにいる浅丘ルリ子に電話する。
このシーンのルリ子が最高で、初めは旭のイタズラ電話と思っていたのが、別れと分かって悲嘆にくれて泣く。
当時まだ18歳だが、素晴らしい演技で、こちらも思わず泣いてしまった。
タイトルの最後の方に、村井志摩子の名があった。
彼女は、舞台芸術学院からチェコに留学し、帰国後チェコ等の芝居の翻訳・演出をやっていたが、ATGの葛井欣四郎と結婚した。
こんな映画の端役に出ていたとは知らなかったが、どの役かは分からなかった。
最後、旭の高音の歌が流れる中で金子信雄と一緒に乗った車が去っていく。
次に小林旭が戻って来た時は、滝新次と名乗る渡り鳥になっていたのである。
神保町シアター