昭和14年、東宝映画で作られた音楽メロドラマ、監督は伏水修で、主演は里見藍子と月田一郎、椿澄枝、北沢彪など。
いきなり山田耕筰指揮の『アルルの女』をJOAKでの演奏で始まる。
それをラジオで聞いている、椿と里見。
北沢は、NHKのアナウンサーで、椿と婚約している。
椿の兄の月田は、作曲家・歌手で、里見と好き合っているが、月田には先輩の井上園子も憎からず思っていて、その間を清川虹子が取り持とうとしている。
清川のコメディエンヌブリが流石で笑える。
北沢と椿の結婚式では、井上の他、友人の藤山一郎、渡辺はま子、桜井潔とその楽団等の演奏が行われる。
完全な音楽映画なのであり、音楽は伊藤昇で、伊藤はクラシックはもとよりポピュラーにも通じていたので、非常に音楽が良い。
その式の最中に、月田に召集令状が来て、披露宴は『出征兵士を送る歌』による壮行会になってしまう。
この辺は、昭和14、15年が戦前のモダニズムが最高潮だった時で、それが戦争に移行してゆく時代性がよく描かれている。
清川虹子による嫌がらせで、月田が自分を嫌ったと誤解した里見は、姿を消し、大阪に行く。
大阪では、キャバレーで働き、そこにはミルク・ブラザーズが出ていて、川田晴久が歌う。
この辺の東京と大阪の音楽の違いが面白い。
また、東京では後楽園での巨人・阪神戦も行われ、ラジオ放送も行われている。
最後、中国で負傷した月田一郎は、帰国して白浜の病院で自作の『君を呼ぶ歌』を歌い、そこには新聞で月田のことを知った里見も駆け付けてくる。
里見のピアノで、月田が歌うところでエンドマーク。
桜井潔の演奏がきわめてメリハリのついたダイナミックなものであること、渡辺はま子の『何日君再来』がぶりっ子的歌唱であったことがわかった。
白浜では、小唄勝太郎の歌もあった。
衛星劇場