昔買って一度読み、それ以来ほっておいた脚本家山崎厳の自伝的な本『夢のぬかるみ』を読んだ。
山崎は、小林旭の「渡り鳥シリーズ」等を多作したシナリオライターで、日活がポルノに移行した後は、テレビの時代劇やアニメの脚本家だった。
そこには、先日もCSで見た『黒い傷跡のブルース』が、ポール・ニューマン主演の『片目のジャック』で、企画部長と一緒に新宿で見てシナリオを書いたことが書かれている。
そうした日活アクション映画の裏話も貴重だが、なかでパーティーでであった女とトラブルになり、最後はかなりの金をふんだくられる件がある。
その女のみならず、両親もぐるのすごい一家の話で、これは新藤兼人作、川島雄三監督、若尾文子主演の『しとやかな獣』によく似ている。
当時、売れっ子のシナリオライターのところに出没し、トラブルを起こしては、多額の金を取って行った一味がいて、それが新藤兼人では『しとやかな獣』になり、ここでは山崎厳の本になったのではないだろうか。
川島の作品では、こうした連中が生まれたのは、日本が戦争に負けたためで仕方がないという風に描かれていた。
古川ロッパは、戦後の喜劇人の特徴を「卑怯な行為をして笑いを取る」として軽蔑し、典型として森繁久彌を挙げている。
確かに、戦後の日本は、そうした社会、時代になったのだと思う。