『アカシアの雨がやむとき』

この映画は、1963年『雨の中に消えて』と『非行少女』の後少しして公開された。

中学の同級生で、日活をよく見ていた男に聞くと「あまり面白くなかった」とのことだったので、その時は見なくて正解だったと納得した。

どことなくポスターの絵柄が古臭いような気がしていたからである。

今回、初めて見て、古臭いなと思った。

霧につつまれた湖で、会社員の庄司永建が騒いでいる。

日活お馴染みのボート屋のオヤジの山田禅二と駆けつけてきた警官の河上信夫さん。

一方、湖の岸辺でボートの中に倒れているレインコートの女性浅丘ルリ子を画家の高橋英樹が発見して救う。

浅丘ルリ子は、モデルで、写真家とボートに出て、襲われそうになり、男は湖に落ち、彼女だけが助かったのである。

なんとも古臭い話、まるで鶴屋南北の戯曲みたいではないか。

週刊誌等で、写真家の男との心中未遂事件にされてルリ子は、クラブを追われ、会社との契約も失う。

高橋英樹は、新進画家で、彼には友人で作曲家の葉山良二がいて、彼はクラブでピアノを弾いていて、そこで歌う歌手が西田佐知子。

一時は、葉山とルリ子が知り合って愛し合うようになるが、最後は元に戻る。

ともかく、古いのである。

これは戦後の日活映画ではなく、大映であり、監督の吉村廉、脚本の棚田吾郎も元は大映のスタッフだった。

ただ、特筆すべきは撮影の姫田真佐久で、諸処に凝った画面を作り出していたのは、さすがだった。

ラストは、勿論「アカシアの雨がやむとき」が流れる。

浅丘ルリ子が病弱な母親と住んでいるのが佃島で、実際の渡しの船内からのショットは珍しい。

また、浅丘ルリ子が一時期働こうとするダンサーたちのリーダーが千代郁子とは懐かしい。

彼女は、蔵原惟繕の名作で、ジャズへの日本人の誤解の集大成のごとき『狂熱の季節』以外に見たことはないので。

その後、浅丘ルリ子が引っ越す、長い木の橋があるロケ場所はどこだろうか、門前仲町の先あたりのように思えるが。

併映は、木下惠介監督の名作で、私には面白くない『お嬢さん乾杯』だが、スタンダードをビスタサイズで上映するという乱暴な上映だったのは驚いた。

銀座シネパトス

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