1963年、大映の増村保造が監督した作品。
東京のチンピラヤクザの本郷功次郎や藤巻潤らが、本郷の父親の旅回り一座の座長の死から、父親に代わって旅回り一座を受け継いで興行する話。
旅一座の話では、今村昌平の『盗まれた欲情』があるが、今村のような最底辺の人間のエネルギーの発散の賛美はなく、むしろ愚かしさが描かれている。
一座の先乗りの中村是公が面白く、その他大映専属の名を知らない役者が大挙して出ている。
唯一の花は、三条江梨子で、田舎の名門医院の娘で、本郷とできてしまい、親たちが許可しないことから、一座の連中はその町の不正を芝居にして暴く。
企みは成功し、三条と本郷は結ばれ、連中は芝居の面白さに目覚めて旅回りを続けていくことを決意する。
増村保造らしい面白さはあるが、『妻は告白する』『でんきくらげ』『遊び』『第二の性』『しびれくらげ』のような一人の女性を通して自立を描くものではない。
増村の映画の主人公に男はふさわしくないのである。
続いて、カリプソ娘として『バナナ・ボート』で大人気だった浜村美智子の『ジャズ娘に栄光あれ』も見る。
監督は山本嘉次郎で、安直なスター誕生ものだが、劇中のショー場面が面白い。
浜村が歌うバックに、日劇ダンシング・チームの踊り手のダンスが付くが、これが全く当時の日劇のショーなのだ。
演出は県洋二で、この種の映像はまったく残っていないので、貴重な資料だろう。
阿佐ヶ谷ラピュタ