三国連太郎が亡くなられたので、録画しておいたのを見てみる。
彼の訃報に必ず触れられているデビュー作だが、実際に見た人は少ないのではないだろうか、私も初めて見た。
驚くことに、その後の三国連太郎とは全く逆の、若き正義漢の役である。
新聞社の若手記者が三国で、上司の社会部長が森雅之。三国は、森から高級官僚の妻が家出して失踪したので、それを追えと指示を受ける。
その妻は、淡島千景で、実は戦前、森と淡島は付き合っていたことがあり、なんと森は共産党のシンパだったが、止めて新聞社に入ったのである。
これは、読売新聞争議で活躍した鈴木東民をモデルにしているのだろうか。
淡島の夫の大蔵次官は千田是也、彼は傲岸不遜な高級官僚の典型。
三国は、淡島を追って軽井沢に行くと、父親の笠智衆と淡島の妹桂木洋子がいて、彼女から聞きき、淡島は静岡の友人のところにいると言う。
友人は、楠田薫で(この人は俳優座の女優)、そこに三国は桂木と一緒に行って、淡島に会い、色々と事情を聞く。
こんなことをしている内に、当然のことながら三国と桂木は恋仲になってしまうが、桂木は実は難病で、死の床についてしまう。
森と淡島が再会し、それを知った千田に森は脅されるが、千田が法的抜け穴で収賄をしていたことを三国に暴かれ、千田は淡島との離婚に同意する。
桂木洋子は、死んでしまうが、その場で、三国連太郎は桂木洋子と結婚する。
この死の床での結婚式というのも驚きだが、舟木一夫・和泉雅子の大ヒット映画『絶唱』の先駆けとでもある。
森は、一人になった淡島に求婚するが、淡島は、森が腐れ縁的に付き合っている女優小林トシ子と結婚するべきと言い拒否して一人で生きてゆく。
この木下恵介作品としては、極めて評価の低い映画は、一体なにを言いたいのだろうか。
原作は岸田国士の小説で、簡単に言えば、見ているだけで何もしない戦前派森雅之と、直接的に行動する正義感の戦後派三国との対比であろう。
岸田がなぜこのような対比の小説を書いたのはよくわからないが、獅子文六のように、戦後風俗の典型として風刺しただけなのだろうか。
戦時中、大政翼賛会文化部長として戦争体制に関わり、戦後は公職追放になってしまうが、彼は本来は西欧的知識人だったのだから皮肉である。
そのことが戦後は大きな傷になっていた岸田国士には、一種の諦念があり、それは彼の娘で女優岸田今日子のニヒルな演技にもなったように思う。
衛星劇場
コメント
そう!!
この映画で三国連太郎を見た時「何て綺麗な男の人なんだろう」と思いました。
私は仕事柄、「もしタイムスリップが出来たらミラノコレクションかパリコレの斬新なデザインを着せてランウェイ歩かせたいなあ」と思いました(^_^)