1964年に日活で製作された中平康監督作品で、多分高校3年生のとき、蒲田西口にあったパレス座で3本立ての1本として見たと思う。
他がなんだったかはよく憶えていないが、1本はやはり中平監督で、加賀まり子主演の『月曜日のユカ』だったと思う。
多分、この加賀まり子が裸で後ろ姿の強烈なポスターにつられて見る気になったのだと思う。
『月曜日のユカ』は、以前DVDになったときに買って見て、表現や台詞が異常にキザで参ったことがあった。
『砂の上の植物群』は、吉行淳之介の小説の映画化で、植物群とは、パウル・クレーの絵に触発されたもので、この映画は、基本的にモノクロだが、クレーの絵が出るところだけは、カラーになっている。
この時期のピンク映画に多くあった、濡れ場になるとカラーになる「パートカラー」と同じだが、それを抽象的に使用しているのが中平らしい。
化粧品のセールスマンの中谷昇は、横浜のマリンタワーで知り合った唇だけに赤い口紅をつけていた女学生西尾三枝子に引かれてホテルに行く。
彼女は意外にも処女だったが、「自分の姉を誘惑してひどい目に合せてくれ」と言う。
姉は稲野和子で、クラブのママだが、その不思議な魅力に中谷は次第に惹かれてゆき、この二人の姉妹の間に挟まれる奇妙な関係になる。
彼には妻の島崎雪子がいるが不仲で、中谷は自分の父と島崎との間も疑っている。
この作品には、その後のロマンポルノ等で何度も描かれる、近親相姦、不倫、サド・マゾプレイ等が盛り込まれており、その意味では、ここでも中平康の先取り性はすごいと言えるだろう。
だが、最後も特に驚くような結末ではなく、その意味ではよくできた風俗映画となるだろう。
いずれにしても中平の本質は、そうした風俗映画、あるいは娯楽映画にあったわけで、『才女気質』『紅の翼』『あいつと私』『泥だらけの純情』等がベストとなるのではないだろうか。
川崎市民ミュージアム