1964年、大作『人間の条件』を完成させた後に、にんじんプロが小林正樹監督で作ったサスペンス映画。
主演は岸恵子で、大企業の社長秘書から社長の遺産を受ける美人事務職員の不思議な人生をえがくもの。
銀座で宮口精二に呼び止められ、渋々喫茶店で弁護士の彼とお茶を飲むところから回想が始まる。
社長山村聡が胃ガンになり、あと半年の命とわかり、「自分には3人の子供がいるので探してほしい」と言い、それぞれを探すことが始まる。
妻の渡辺美佐子と秘書課長の千秋実、宮口の事務所に出入りしているやり手の仲代達矢、意外な経過で自分が山村の息子と知る川津裕介など。
湘南の愚連隊川津の仲間に、「世界の蜷川幸雄」がいるのは笑える。
渡辺と千秋が連れてきた幼女は、本当の子ではなく、実は彼ら二人の娘であり、仲代が連れてきたヌードモデルの芳村真里も偽物で、実は本当の娘川口敦子を芳村が殺害していたことも暴露される。
芳村が、ヌードスタジオのモデルをやっているのが福島の飯坂温泉で、路面電車の線路が写っているが、こんなところにも電車があったのだろうか。
この辺の筋書きは非常に面白くて、脚本はよくできている。今見ても面白く、日本映画的ではなく、フランスやアメリカ映画的なドライさがある。
最後は、なんと岸恵子を山村が無理やりものにしてしまい、彼の子を妊娠したことで、岸恵子にすべての遺産が残されることになる皮肉な結果。
この時期の岸惠子は、まだ清純派なので、山村との関係のシーンがぎこちなくておかしい。
彼女が清純派をやめるのは、蔵原惟繕の愚作映画『雨のアムステルダム』での、外人相手の娼婦である。
この『からみ合い』は非常に面白い映画だが、公開当時はまったく評価されていなくて、キネマ旬報でも10位にもランクされていない。
小林正樹は、異常にまじめで肩の凝る映画が多いが、こういう娯楽作品もきちんと作っているのはさすが松竹大船出である。
武満徹のモダンジャズが素晴らしく、撮影は川又昴というスタッフが優秀で、にんじんクラブという独立プロなので、蜷川をはじめ多くの新劇人が出ている。
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